「オープナー」と「ショートスターター」の違いと活用方法

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先発とリリーフが別々の役割となる、いわゆる「投手分業法」が確立されてから数十年、新たな投手の役割が日本野球にも定着しつつあります。本項では、「オープナー」や「ショートスターター」の基本情報や両者の違い、現代野球へ適応するための活用法などを考察していきます。

「オープナー」「ショートスターター」とは

オープナーとは

オープナー(Opener)
本来はリリーフの役割を持つ投手が先発のマウンドに上がり、短いイニングを限定で投げて、2番手でロングリリーフする投手(第2先発)に継投する役割です。

ショートスターターとは

ショートスターター(Short Starter)
本来はリリーフの役割を持つ投手が先発のマウンドに上がり、短いイニングを投げて次のリリーフ投手に継投する役割です。

「オープナー」と「ショートスターター」の違い

ヤクルトの清水昇(公式フォトギャラリーより引用)

両者の違いは継投する投手によって区別できます。

「オープナー」は本来先発する投手の前にリリーフ投手が繋ぎをすることです。これに対して「ショートスターター」は後述するブルペンデーのように、先発させる投手がいないときに本来リリーフする投手のみで継投することです。ショートスターターの役割を持つ投手が先発した試合は「リリーフデー」と呼ばれ、長いイニングを投げる先発投手がアクシデントで投げられない時や、ローテーションの枠を埋める先発投手がいない場合に採用されます。

いずれにせよ、試合序盤の短いイニングを救援登板のリズムで抑える役割であるという点では共通しています。

歴史

起源

2018年にタンパベイ・レイズが採用した奇策「オープナー」はライン・スタネックをはじめとするリリーフ投手が先発マウンドに立つようになり、注目を集めるようになったと言われています。レイズでは2018年シーズンの163試合中、半数近い62試合もの試合で救援投手を先発投手として登板させることにより、一躍この戦術が脚光を集めました。

「オープナー」の特徴は、急増の先発投手ではなく、「オープナー」自身が役割となることです。前出したスタネックも同年29試合に先発しながら、責任投球回となる5イニングを投げることは一度もありませんでした。

球界への派生

レイズの手法は他球団も取り入れ、「オープナー」の存在はMLBの一大トレンドとなりました。この戦術は海の向こう、日本のプロ野球でも取り入れられます。

2019年には北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督や横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督らがチーム内のリリーバー数名に「オープナー」の役割を課すなど、影響が広く見られました。

また、先発ローテーションの谷間にリリーフ投手を先発登板させ、リリーフ投手だけで9回を投げ切る、「ブルペンデー」と言われる戦術は多くの球団が採用しました。特にシーズン中盤~終盤の過密日程の場合だと、先発投手が不足する試合での「ブルペンデー」は非常に便利に使われています。

効果測定と今後の展望

野球における初回とは、必ず1番から始まる必然で、強打者が並ぶため得点期待値が一番高くなります。そのため、初回に試合の主導権を握るために短いイニングを確実に抑えることのできる役割のリリーフ投手を登板させることが有用と言われています。

課題

・試合に入っていくまでの調整方法が難しい。

先発マウンドというのは特別な存在であり、リリーフ投手のような感覚でマウンドに向かうことは難しいと言われています。リリーフ投手でも毎回万全のパフォーマンスを発揮できるわけでもなく、試合序盤が打ち込まれてしまうというリスクも発生します。

・投手の評価方法が難しい

先発した投手が短いイニングで降りると、従来の「勝」「ホールド」「セーブ」といった成績がつかないので、投手の評価方法が難しくなるという欠点もあります。特に球団の年俸査定においては、従来の指標のみに捕らわれない柔軟な査定が求められます。

今後の展望

従来の役割理論にこだわらず、勝利とチーム運営のために何が最適かを試行錯誤しながら運営してほしい。はじめは障害も出るけれども、投手分業法のように常識として確立してしまえば野球の戦術が更に広がると期待されます。

ヤクルトの「ショートスターター」

ヤクルトでは2年目の 清水昇 が昨年の先発起用から一転してリリーフに回り、本来の投球を取り戻しています。また、ヤクルトのリリーフ陣を見てみると、寺島成輝星知弥 ら、先発もこなせる投手がリリーフとして機能しています。今はリリーフの柱となっている 石山泰稚近藤一樹 らもかつては先発投手を務めていました。

このように先発として起用されていた投手陣がリリーフ陣の適性を発揮して、リリーフ投手が過多の「後ろでっかち」状態になると、先発もリリーフもできる投手が貴重になります。普段はリリーフ投手をしているけれども、先発投手としての経験を活かして、「ショートスターター」として序盤の短いイニングを任せることもできます。

2019年シーズンでは平井諒が夏場にショートスターターとして登板しました。

ブルペンデーに先発登板した平井諒

おわりに

前者のように「予告先発」が導入されて、先発投手が神格化されている情勢だと、導入に課題が残るのも事実です。

今の環境を変えていき、柔軟な発想で新しい野球を作っていくのは首脳陣や投手たち自身でしょう。

脚注

副題:弱者の戦術「オープナー」および「ショートスターター」は日本でも通用するのか?

2020/08/03

yoshi-kky