【ドラフト2020特集・決定版】未来の主力を総チェック!ヤクルト2020ドラフト会議詳細情報/慶応エース木澤尚文ら

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10月26日、ドラフト会議が行われ、ヤクルトからは10名(本指名6名、育成4名)の交渉権を獲得しました。各指名選手の詳細情報を確認し、未来のツバメの主力をいちはやくチェックしましょう!

指名選手一覧

本指名

1位 投手 木澤尚文 慶應義塾大 右右 <最速155km/hのパワーピッチャー>
2位 投手 山野太一 東北福祉大 左左 <リーグ無敗左腕>
3位 捕手 内山壮真 星稜高 右右 <奥川恭伸の後輩捕手>
4位 内野手 元山飛優 東北福祉大 右右 <堅守の遊撃手>
5位 外野手 並木秀尊 獨協大 右右 <強肩外野手>
6位 投手 嘉手苅浩太 日本航空石川高 右右 <長身右腕>

育成指名

育成1位 投手 下慎之介 投手 健大高崎高 左左
育成2位 内野手 赤羽由紘 BC信濃 右右
育成3位 捕手 松井聖 BC信濃
育成4位 投手 丸山翔太 西日本工業大

指名選手情報

1位:木澤尚文 投手(慶応義塾大学)

1位は木澤尚文(きざわ なおふみ)。投手。右投右打。慶應義塾高校⇒慶應義塾大学。183㎝85㎏。

東京六大学の名門・慶應義塾大学のエースとしてリーグ優勝争いの中心にいるエース兼主将。

慶應義塾高校では故障に悩まされ、全国大会の経験はなし。慶應義塾大学に内部進学するも、1年時は故障が長引き、リーグ戦の出場はなかった。

木澤の存在が注目されるようになったのは2年春から。リリーフとして登板するといきなり151km/hを計測し、同期の佐藤宏樹(ソフトバンク育成1位)と共にドラフト候補としてファンやスカウトから注目を集めるようになった。

3年春から高橋佑樹(現東京ガス)と共に先発の座に定着し、最速155km/hのストレートを武器に2勝をあげる。3年秋には全国大会で先発勝利をあげ、チームの神宮大会制覇に貢献した。

最速155km/hのストレートを軸に、140㎞/h前後と球速差の少ないカットボールスプリットを武器にもつパワーピッチャー。パワーだけでなく、緩急のついたカーブも操り、大崩れしない安定感のあるピッチングも魅力。

故障歴が長く、リーグ戦で大きな実績を残せていないのが気になるが、裏返せば肩の消耗が少ないということ。まだまだ伸びしろを感じさせるピッチャーで、近い将来先発の中心的存在となってくれそうなピッチャー。奪三振能力が高く、リリーフ適性もありそうだが、やはり先発で大成してほしい投手である。

なお、木澤投手は筆者と同じく慶應義塾大学商学部の卒業生となる。私とは違って凛々しい顔つき聡明な野球理論を持っており、既にヤクルトファン、特に女性ファンの心を鷲掴みにしているようだ。六大学と同じ神宮のマウンドで活躍する木澤投手の姿を見るのが、今から楽しみでならない。

以下、木澤投手の入団コメントの一部抜粋。

高い評価をいただいて、嬉しい気持ちはある。その反面、プレッシャーのかかる立場になるので、打ち勝っていかないといけない。力強いストレートと鋭い変化球をストライクゾーンに投げ込んでいけることをアピールしたい。

先日(25日)、五十嵐選手が引退されて、ヤクルトファンから愛される投手になりたい。

(外部リンク)慶應義塾大学体育会野球部HP:https://baseball.sfc.keio.ac.jp/members/kizawa-naofumi/

2位:山野太一 投手(東北福祉大学)

2位は山野太一(やまの たいち)。投手。左投左打。高川学園高校⇒東北福祉大学。172cm77㎏。

仙台六大学リーグで22勝無敗の「負けない左腕」。高校時代は3年夏に甲子園で寺島成輝と対戦。

山口県の高川学園高時代には2016年夏に同校初の甲子園大会出場へと導いた。初戦では寺島成輝擁する履正社高と対戦するも、初戦敗退。

高校卒業後は東北福祉大に進学。1年春からリーグ戦で先発投手として活躍。故障で思うように投げられないシーズンもあったが、4年間通して一度も負けがつかなかった。3年春には大学日本一を経験。

スリークォーター気味の腕の振りから4年秋に最速150㎞/hをマーク。172㎝と小柄ながら多彩な球種で打者を惑わす技巧派左腕。

ヤクルトの大卒で勝てる投手といえば、大西広樹がいる。大西はルーキーイヤーに先発登板するなど、将来の先発ローテション候補としての活躍が期待される。山野も将来的には大西とともに先発ローテーションの柱としての活躍を期待したい。

山野投手は指名挨拶で「一日でも早く一軍のマウンドに立ち、一勝でも多くヤクルトに貢献したい」と抱負を語った。貪欲に目の前の勝利を目指す姿が、最下位に低迷するヤクルトに大きな好影響をもたらしてくれることだろう。担当は斉藤宜之スカウト。

外部リンク:サンスポ https://www.sanspo.com/baseball/news/20201027/swa20102719120005-n1.html

3位:内山壮真 捕手(星稜高校)

3位は内山壮真(うちやま そうま)。捕手。右投右打。星稜高校。172cm72kg。富山県出身。

強打が売りの世代トップレベルの捕手。星稜高の1学年上には山瀬慎之助(現巨人)がいたため、2年時までは遊撃手。捕手としての経験が懸念されるが、野球センスは抜群で、スローイングに定評がある。

高校時代の1学年上には前述の山瀬と奥川恭伸。世代最強バッテリーと甲子園を共に闘い、2年夏にはチームの甲子園準優勝に貢献した。プロでは奥川と再びチームメイトとなり、星稜バッテリーとして期待が集まる。

バッティングセンスにも定評があり、広角に長打が出るのが特長。高校通算34本塁打。

ヤクルトは中村悠平、西田明央に続く捕手が高卒4年目の古賀優大しかおらず、次世代捕手として内山にかかる期待は大きい。遊撃手と捕手両方できるのは強みだが、まずはプロの捕手としてしっかり経験を積みたいところ。担当スカウトは「捕手として獲得した」としながらも、本人の意向を伺ってポジションを決めるという。担当は阿部健太スカウト。

4位:元山飛優 内野手(東北福祉大学)

4位は元山飛優(もとやま ひゆう)。内野手(遊撃手)。右投左打。佐久長聖高校⇒東北福祉大学。180㎝79㎏。大阪府出身。

長野県の佐久長聖高時代は1年夏と3年夏に甲子園出場。東北福祉大に進学すると、1年春から試合に出場。大学野球界屈指のヒットメーカーであり、広範な守備範囲と正確な送球に定評のある職人タイプ

課題とされてきたフィジカル面も着実にサイズアップを重ね、4年秋のリーグ戦では2本塁打をマークした。プロ入りして体格をアップさせれば、更にスケールアップするだろう。

2位の山野とはチームから2人目の指名となった。ヤクルトが同一チームから2人同時に指名するのは2011年の比屋根渉、太田裕哉(日本製紙石巻から3位、4位)以来。同じ大学からの同時指名は1969年の大矢明彦、内田順三(駒沢大から7位、8位)以来。

山野とは公私ともに仲が良く、3年時には「追いコン」で即興の漫才を披露したそう。「世界一のショートになりたい」と意気込む。

ヤクルトには宮本丈や太田賢吾ら、同世代の内野手が多いもののいずれもレギュラー獲得に至っていない。大学屈指の内野守備をほこる元山がこの間に割って入る可能性は十分にある。

なお、佐久長聖高出身の選手がドラフト指名されるのはこの元山が初めてのケース。甲子園常連高であるだけに多少意外だが、この元山の活躍を皮切りにプロ排出者が増えていくか。

サンスポ:https://www.sanspo.com/baseball/news/20201028/swa20102805020002-n1.html

5位:並木秀尊 外野手(獨協大学)

5位は並木秀尊(なみき ひでたか)。外野手。右投右打。川口市立川口高校⇒獨協大学。170㎝71㎏。埼玉県出身。

走塁センス抜群の小兵外野手。3年時に頭角を現し、リーグのベストナインを獲得。同年の日本代表選考合宿に参加し、チームナンバーワンの脚力で話題を集めた。

俊足が売りの野手として、同期の五十幡(日本ハム2位)と対比されることが多い。短距離走では五十幡を上回るタイムを出すこともあり、「サニブラウンに勝った五十幡に勝った並木」と称されることも。首都大学野球連盟の獨協大学所属。同大学からは史上初めてのNPBドラフト指名選手となった。

ヤクルトでは同世代の外野手に右のスラッガータイプが多いので、右の巧打者タイプになれるか。周東(ソフトバンク)や和田(ロッテ)のような、脚のスペシャリストとしての活躍に期待するのも面白い。

大学時代には神宮球場で警備のアルバイトをしていたそう。

以下、並木選手のコメント

指名の瞬間は、ほっとしました。今はスタートラインに立っただけなので、周りと切磋琢磨して頑張りたい。

(外部リンク):獨協大学HP https://www.dokkyo.ac.jp/information/2020/20201026003901.html

6位:嘉手苅浩太 投手(日本航空石川高校)

6位は嘉手苅浩太(かてかる こうた)。投手。右投右打。日本航空石川高校。191㎝105㎏。兵庫県出身。

191㎝とスケールの大きい大型右腕

上背があるだけでなく、105㎏の体格と高校生の時点で下半身がかなりガッシリしている。馬力ある体から繰り出される最速148km/hのストレートを軸に、安定したピッチングでゲームメイクする。

3年夏の甲子園交流試合を見るに、走者を背負ってから制球が乱れる傾向があり、ここら辺が課題か。2年夏には肘痛から野手としても出場するなど強打も自慢。

本人は「最多勝をとれるような投手として、球界を代表する投手になりたい」と抱負を語った。

繰り返すようだが、とにかくスケールの大きい大型右腕である。プロに入って経験や投球術を身に着ければ先発ローテーションとして安定した働きをするようになるだろう。怪我歴があるので、そこは十分にケアしながらも、多少アバウトなコントロールでも打者をねじ伏せられるような大投手に育ってほしい。

育成1位:下慎之介 投手(健大高崎高校)

育成1位は下慎之介(しも しんのすけ)。投手。左投左打。高崎健康福祉大学高崎高等学校(健大高崎高)。183cm87kg。

ゆったりとしたスリークォーター気味の腕の振りから多彩な球種を操る技巧派左腕。スライダーの切れに定評があり、ヤクルトでは久保拓眞(2018年7位=九州共立大)とタイプが被る。2年夏に神宮大会準優勝に貢献。

巨人ファンの両親が阿部慎之助選手にあやかってつけた名前だそうだが、名前は「助」と「介」でちがう。

左の技巧派というところでリリーフとしての活躍が想定されるが、先発としても期待したい存在。まずはファームで体づくりをして、数年後の支配下契約を目指したい。

下投手は「神宮は投げやすい球場。一日でも早く一軍の舞台で投げたい」と抱負を語った。

なお、ヤクルトが高卒投手を育成ドラフトで指名したのはこの下投手が初めてである。育成手腕に注目が集まる。

育成2位:赤羽由紘 内野手(信濃グランセローズ)

育成2位は赤羽由紘(あかはね よしひろ)。内野手(三塁手)。右投右打。日本ウェルネス信州筑北高校⇒信濃グランセローズ。178㎝78㎏。

驚異的な長打力が自慢の大型内野手。高卒2年目ながら独立リーグでシーズン8本塁打を記録。引っ張るだけでなく、広角にホームランを打てる天性のホームラン打者。

ヤクルトでは同い年の濱田太貴(2018年ドラフト4位)や中山翔太(2018年ドラフト2位)と右の大砲でタイプが被る。同世代の大砲タイプをここまで揃える必要があるのか少し疑問だが、ヤクルトは基本的に打って勝つチーム。将来的には濱田らと主軸を打てるような打者になってほしい。

育成選手ならではの「一芸に秀でた」タイプ。まずはイースタンリーグで持ち前の長打力をいかんなく発揮し、支配下契約を勝ち取ってもらいたい。

育成3位:松井聖 捕手(信濃グランセローズ)

育成3位は松井聖(まつい しょう)。捕手。右投左打。東邦高校⇒中部大(中退)⇒香川オリーブガイナーズ⇒信濃グランセローズ。176㎝78㎏。

中部大では出場機会を求めて中退し、独立リーグでのプレーを選んだ苦労人。独立リーグでは香川、信濃でプレー。本職は捕手だが、出場機会を得るために内外野どのポジションもこなす献身ぶり。打撃面でも、左打ちでレフト方向にホームランを打つパンチ力も魅力だ。

ヤクルトは良くも悪くも怪我人が多く、全ポジションの人数が慢性的に不足しがちである。捕手をはじめ、全ポジションを守れることをアピールすれば、支配下契約のチャンスは大いにあるだろう。

育成4位:丸山翔太 投手(西日本工業大学)

育成4位は丸山翔太(まるやま しょうた)。投手。右投左打。小倉工業高校⇒西日本工業大学。192㎝80㎏。

恵まれた体格から最速148㎞/hを投げ込む大型右腕。

一般企業に内定を得ていたが、了承を得たうえでプロ志望届を提出したという。一度は引退を決めたという右腕だが、プロとしての挑戦権を得た。

ヤクルトでは過去に徳山武陽(2011年育成1位。2017年退団。現ヤクルト球団広報)、中島彰吾(2014年育成1位。2017年退団)といった選手が大学からヤクルトに育成入団し、支配下契約を勝ち取っている。右のリリーバーは何人いても困らない存在であり、丸山もプロで腕を磨いて支配下契約を勝ち取りたい。

ドラフト総括

各選手の紹介をしてきたが、チームのドラフト選手としての総括を行いたい。

獲得選手は10名。10人の内訳は投手5人、捕手2人、内野手2人、外野手1人と、バランスのとれた指名に。世代別で見ても高卒が3人、大卒が5人、独立が2人と即戦力を中心としながらも将来も見据えた指名となった。2年連続で社会人出身の選手は指名しなかった。

1位指名は抽選で東京六大学リーグのエースである早川隆久(早稲田大)、鈴木(法政大)と外したが、同じく六大学リーグの木澤(慶応大)の指名に成功。神宮を本拠地とするヤクルトが六大学のリーグに注視するのは喜ばしいこと。2位指名では大学生でトップクラスの左腕の指名に成功した。

最大の補強ポイントだった捕手は3位で内山壮真選手の指名に成功。上武大の古川裕大選手(日本ハムに3位指名)を狙っていたとみられたが、直前で日本ハムに指名されてしまい、高卒捕手へ方向転換。無事に狙っていた世代トップレベルの捕手獲得に成功。

下位ではそれぞれ内野手、外野手のトップクラスの元山飛優、並木秀尊の指名に成功。レギュラー定着できていないポジションの新陳代謝としての役割を期待できる素材だ。

即戦力クラスの指名が続き、高卒世代の投手が手薄となったが、6位と育成1位で高卒投手を獲得できた。6位の嘉手苅は、橿淵スカウトも「ここ(6位)まで残っているとは思わなかった」という逸材。ヤクルトの高卒世代は金久保優斗が台頭してきつつあり、奥川恭伸など将来性抜群の投手が犇めいている。彼らもここに続きたい。また、育成4位の丸山翔太は地方でも実績の少ない隠し球といえる指名だろう。素材重視の指名であるが、将来の大化けを期待したい。

2年ぶりに参加した育成ドラフトでは、球団史上最多の4名を指名。2位と3位で独立リーグ信濃BCから野手を2人指名。ヤクルトは2軍の試合が怪我人による人出不足で選手が足りなくなる傾向があり、より多くの選手に出場機会を与えるべく独立リーグからの指名に至った。戸田のグラウンドで鍛錬を積み、是非支配下契約を勝ち取ってもらいたい存在だ。

2年連続最下位が濃厚なヤクルトだが、今年上位に進出した中日やロッテはドラフトの成功を積み重ねて上位進出を果たしている。ヤクルトも将来を見据えたドラフト指名が続いており、数年後には今年指名した選手が中心選手となって上位進出に導いてもらいたいところだ。

脚注

2020/10/30

yoshi-kky