内川聖一がヤクルトにおいて打線と守備の要になる|村上・濱田への影響

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NPB通算2171安打の名打者・内川聖一がヤクルトへ加入した。2年連続最下位からの逆襲を狙う2021年の東京ヤクルトスワローズの浮上を鍵を握る男は、オープン戦で打線の中心となり存在感を放っている。ソフトバンクから移籍した内川聖一がヤクルトに与える影響を見ていこう。

内川がヤクルトへもたらす効果

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春季キャンプ、オープン戦に入って実戦で一際存在感を放っているのが5番・一塁を務める新加入の背番号7、内川聖一

シーズン前は村上を一塁固定という構想で、昨年1軍出場試合0の内川は控えという扱いだった。

しかし、キャンプが始まってみると1軍の試合勘などブランクを一切感じさせることなく、あっという間に5番・一塁の定位置を掴み取ってしまった。

今やヤクルト打線に欠かせない存在となっている内川聖一がチームにどんな役割を果たすのか、考察していこう。

打線の要

内川といえば通算2171安打を誇る天才的な打撃だろう。右打者で通算打率.303は現役の右打者で唯一。左打者を加えても通算打率3割をクリアしているのは青木宣親(ヤクルト)とこの内川しかいないNPB有数の巧打者だ(4,000打数以上)。

2020年ヤクルトはリリーフ陣が強固であったものの、チームを支える打線が壊滅的だった。若き4番・村上と青木が打線を支えたものの、その2人以外の打撃は壊滅的。得点はリーグワーストと、投手陣の崩壊以上に深刻な攻撃力不足が際立ってしまった。

内川の加入によって村上・青木に続く存在が表れることになる。新外国人2名(オスナ・サンタナ)が出遅れているものの、内川の存在は何とも頼もしい

内川はオープン戦で天才的な打撃を発揮しており、いとも簡単に安打を量産している。若手の見本となるだけでなく、自身のバットで着実に状態を上げている。

高津臣吾監督も内川の5番一塁での起用を明言しており、レギュラーシーズンに入ってからも通算安打を増やしていきそうだ。

内野守備の要

内川といえば2019年にNPB史上2人目となる一塁手での守備率10割でゴールデングラブ賞を獲得した一塁の名手である。守備率10割とは、失策(エラー)が1度もないということ。守備機会が圧倒的に多い一塁手での失策0は驚異的な数字。

内川はプロ入りから守備が得意というわけではなく、横浜時代は遊撃や二塁でも起用されたが、二遊間でレギュラーを掴むことは出来なかった。その経験は一塁守備にも生きており、外野守備をこなすこともできる。

3月10日のオリックス戦(京セラドーム)でこんなシーンがあった。

先発した41歳のベテラン・石川雅規は強力オリックス打線を相手に苦しむ。制球が定まらず、甘めに入ったところを痛打されてしまう。41歳左腕はマウンド上で気持ちの整理がついていない様子だった。

そこで声をかけにいったのが内川だった。マウンドで孤立しがちなベテラン投手に積極的に声をかけ、捕手とコミュニケーションをとって内野外野へ情報を伝達

昨年までは村上が積極的に投手へ声をかけにいくことはあったが、傍から見ていて内野手が積極的にコミュニケーションをとるということは少なかった。内川の加入は守備技術だけでなく、情報伝達など内野守備の連係などチーム全体に波及する効果も多いだろう。

村上への影響

昨年は全試合で4番としてスタメン出場した村上は自身初の打撃タイトルとなる最高出塁率を獲得。

一方で、村上の後を打つ5番打者を固定できず、チームの勝利には結び付かなかった。村上にとっては自身の成績と同じぐらいチームの勝利に飢えていることだろう。

今季は5番・一塁での起用が増えそうな内川。開幕してからはオスナ・サンタナら外国人助っ人の加入も予定している。

昨年の不振から逆襲に燃える新キャプテン・山田哲人を加えて強力打線を形成していってもらいたい。

若手への刺激

2021年のヤクルトには、自身が持つ才能をいまに開花しようという若き手法がいる。3年目を迎える濱田太貴だ。

濱田は昨年1軍33試合の出場で3本塁打を記録するなど大器の片鱗を感じさせるバッティングを披露。今季はキャンプこそ2軍スタートだったものの、オープン戦からすぐに1軍へ合流。

濱田はオープン戦で3本塁打をマーク。内川さながらの右打ちなど天才的なバッティングを見せている。今季のヤクルト打線において、打撃覚醒が大きく期待される選手だろう。

また、気がかりな男はもう1人いる。濱田と同じ3年目、中山翔太だ。中山は大卒で濱田の4つ年上ながら、実践の舞台では一皮剥けずにいる。

キャンプでは内川に対して積極的に指導を仰ぐ姿があった。百戦錬磨の天才打者が若き天才へもたらす影響について、どういう形で結実するのか楽しみだ。

内川聖一の略歴

大分県大分市出身。1982年8月4日生まれ。右投げ右打ち。

父親が監督を務めていた大分工業高校に入学。高校通算43本塁打で、甲子園出場はなし。2000年ドラフトで横浜ベイスターズ(当時)から1位指名を受け、入団。入団当時の背番号は「25」、2年目から「2」へ変更。

1年目の2001年に1軍デビュー。6年目の2006年には100安打をクリアするが、守備難が影響してレギュラー定着とはならなかった。

8年目の2008年に一塁のレギュラーを掴むと、天才的な打撃センスが開花。NPB右打者最高となる打率.378をマークし、自身初の首位打者と最多安打を獲得した。

2010年オフにFAでソフトバンクへ移籍、背番号は「24」。移籍1年目の2011年から首位打者を獲得するなどの活躍でMVPを獲得、日本一に大きく貢献した。

2015年にはチーム主将に就任。ソフトバンクでは在籍10年間で5度のリーグ優勝、7度の日本一に貢献した。クライマックスシリーズMVP3度、日本シリーズMVP1度とポストシーズンに滅法強いことから「短期決戦の鬼」と異名をとった。

2020年オフは自身初の1軍出場なしに終わり、同年オフに自由契約でヤクルトへ移籍。背番号は「7」。

妻は元フジテレビアナウンサーの長野翼。

年度別成績

通算:19年間 .303(7161打数2171安打)、196本、957打点

  • 首位打者:2回(2008年、2011年)
  • 最多安打:2回(2008年、2012年)
  • 最高出塁率:1回(2008年)
  • 最優秀選手:1回(2011年)
  • ベストナイン:5回(一塁手:2008年、外野手:2009年、2011年~2013年)
年度所属試合打率打席打数安打本塁打打点四球死球出塁率
2001YB30.00022000000.000
2002YB420.33373662227400.371
2003YB450.31316115047418500.335
2004YB940.2873693389717451800.322
2005YB900.274262234645231920.332
2006YB1240.2864394021154342250.329
2007YB920.279274247697291660.337
2008YB1350.37854450018914673140.416
2009YB1320.31855250316017664210.369
2010YB1440.3156375771829664760.371
2011SB1140.33846342914512742520.371
2012SB1380.3005675231577533160.342
2013SB1440.316633570180199246120.376
2014SB1220.30753448815018743450.354
2015SB1360.28458552915011824540.340
2016SB1410.304605556169181063820.345
2017SB730.2973002667912503200.370
2018SB710.24229628168830930.270
2019SB1370.25653550012812412820.296
通 算19770.303783171612171196957492600.350
内川聖一の年度別成績:出典NPBより https://npb.jp/bis/players/21325113.html

内川は常勝軍団を作れるか

野球は言うまでもなく団体競技であり、内川1人が良い成績を残してもチームが浮上していくのは難しい。

個人の力を高める以上に、組織としての力を高めていかなければ上位には食い込めない。ソフトバンクで主将も務めた内川は組織として勝っていく方法が血肉に染み込まれているに違いないだろう。

新キャプテンを務める山田哲人、「終身名誉キャプテン」青木宣親、そして常勝軍団を知る男・内川聖一が2021年のヤクルトをどのようにまとめあげるのか目が離せない。

ポストシーズン男

内川はポストシーズンに滅法強い打者としても知られている。

日本シリーズMVP1度(2014年)、クライマックスシリーズMVP3度(2011年、2015年、2017年)と大舞台で抜群の打棒を発揮した。ホークスファンならずとも大舞台での内川の活躍は鮮明に記憶している人も多いのではないだろうか。

ポストシーズンで良い成績を残すためには、まずレギュラーシーズンで結果を残すこと。その延長にある内川の打棒が楽しみでならない。

脚注

2021/03/15