小川泰弘はエースとしての輝きを取り戻せるか?8年目右腕の復活の可能性とFA移籍の動向について考察

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ヤクルトのエース・小川泰弘が好調だ。先発投手陣の離脱が顕著なヤクルト投手陣において開幕から先発ローテを守り続ける貴重な働きで、8月11日時点で8試合に登板し、4勝2敗防御率4.07。本項では、小川泰弘の活躍の秘密と今季取得見込みのFA権について考察してみよう。

エースとして孤軍奮闘する小川泰弘

今季8試合で4勝2敗と好成績の小川泰弘(画像は公式フォトギャラリーより引用)
今季8試合で4勝2敗と好成績の小川泰弘(画像は公式フォトギャラリーより引用)

今季の小川泰弘

今季の小川泰弘は前述したように8試合に投げて4勝2敗と、登板した半数の試合で勝ち星をあげており、先発投手陣の不調に苦しむヤクルトにおいてひと際目立った存在だ。

特筆するべきはその援護点の高さで、援護率6.00はセリーグトップ。昨年までは投球のリズムが悪く、与四球や牽制等が多く野手のリズムを作れなかった小川だが、今季は持ち味の速球を中心とした大胆なピッチングで試合のリズムを作っているように感じる。

小川泰弘のこれまで

小川泰弘は創価大から2012ドラフト2位でヤクルト入りすると、ルーキーイヤーに17勝の活躍で新人王を獲得し、通算8年間で4度の開幕投手を務めるなどツバメのエースとして長きにわたって活躍している。

本拠地・神宮球場の打者有利な特性もあって投手の評価が低くなりがちなヤクルトにおいて、その日本車のような働きぶりは間違いなく球団史に残る大投手である。

小川泰弘についての詳細情報は選手名鑑ページを参考にされたい。

小川泰弘の通算成績詳細

2013 26試合 16勝4敗 178.0回 QS率73.1% 防御率2.93 WHIP1.12  
2014 17試合 9勝6敗 108.1回 QS率58.9% 防御率3.66 WHIP1.30
2015 27試合 11勝8敗 168.0回 QS率70.4% 防御率3.11 WHIP1.19
2016 25試合 8勝9敗 158.0回 QS率52.0% 防御率4.50 WHIP1.27
2017 22試合 8勝7敗 124.0回 QS率66.7% 防御率2.83 WHIP1.15
2018 18試合 8勝5敗 108.0回 QS率66.7% 防御率2.75 WHIP1.23
2019 26試合 5勝12敗 159.2回 QS率50.0% 防御率4.57 WHIP1.31
通算 161試合 65勝51敗 1004.0回 QS率61.0% 防御率3.51 WHIP1.22

*2017年はリリーフで4試合に登板。

大きな故障もなく、すべての年で100投球回をクリア。チームの浮沈はこの小川泰弘の調子が握っていると言っても過言ではない。

小川泰弘のFA権について

ヤクルトのエースとして活躍が続いている小川泰弘だが、今季で一軍登録年数が7年に達し、既に国内FA権を取得済みだ。

ヤクルトファンとしては当然、小川泰弘はいつまでもチームに残っていてほしい投手である。そこらへんの私情はさておき、FA市場での小川泰弘の存在について考察してみよう。

小川泰弘のFA事情

神宮球場でインタビューに応える小川泰弘
神宮球場でインタビューに応える小川泰弘

5勝12敗と大不振に終わった小川は球団から複数年契約の打診を断り、年俸9000万円(推定)で単年契約を結んでいる。チーム内では6番目に高い年俸で、補償ランクはBランク。FA移籍にあたっては人的保障を必要とする。

小川が務めている先発投手はチーム内でポジションがダブつくポジションでもないため、規定投球回を計算できる小川がFAを宣言すれば間違いなく複数の球団が獲得に名乗りを上げるだろう。

国内FA市場

ナゴヤドームで登板する小川泰弘
ナゴヤドームで登板する小川泰弘

小川の移籍候補先だが、中日が有力と言われている。というのも、小川の出身が愛知県というだけで勝手な憶測が飛んでいるだけなのだが、愛知県の高校を出て東京の創価大学に進んだ小川に地元志向があるとは考えづらい。

そもそも、近年は地元志向のFA移籍は減少傾向で、ただ地元の球団というだけで慣れ親しんだ球団や契約条件諸々を度外視して中日に戻るということは考えられないし、中日もFAで大物先発投手を補強する余裕はないんじゃないかと思う。ちなみに、ナゴヤドームではルーキーイヤーに3勝をあげたが、通算では5勝6敗と負け越している。

年俸は近年先発投手として移籍した野上亮磨(西武→巨人)や美馬学(楽天→ロッテ)の例から考えて3年総額5億円~6億円あたりになってくるのではないか。あとは各球団がシーズンオフに補強策をどの程度考えているか、にもよるが、安い買い物ではないだけに慎重になりそうだ。

中村悠平の存在

恋女房・中村悠平をお姫様抱っこする小川泰弘(公式フォトギャラリーより引用)
恋女房・中村悠平をお姫様抱っこする小川泰弘(公式フォトギャラリーより引用)

小川の移籍に大きな影響を与えるのが、正捕手中村悠平の存在であろう。

高卒、大卒の違いはあれど同い年で長年バッテリーを組んできた二人だが、中村は一足先に2018年オフに国内FA権を取得し、3年契約で残留している(2020年が契約2年目)。

中村はチームにとっての必要不可欠な存在であり、チームのために残留を決断し、献身的にチームに貢献している。小川も中村の姿勢を参考にしながら移籍か残留か判断する材料にするだろう。

小川はマウンド以外ではあまり感情を出すほうではなく、昨年の契約更改の席でも「一年間で勝負するだけ」と口数少なかった。ヤクルトが小川に提示する条件を含めて、フラットに契約面で判断するのではないか。後は、もう一年待って海外FA権を行使してのメジャーリーグという線も考えられなくはない。

いずれにせよ、小川は今季エースとして文句ない成績を残してほしいし、ヤクルト球団もエースにとって恥ずかしくないような契約条件を提示してほしい

私見

私事ながら、私は小川や中村と同じ1990年生まれの「90年世代」で、入団当初から二人のことはずっと気にかけていた。2018年オフに谷内亮太が日本ハムへ移籍してから、ついに2名となってしまったヤクルトの「90年世代」だが、小川には悔いの無い選択をしてほしいというのが本音だ。

ヤクルトファンとしては、末永くスワローズのユニフォームを着て投げる小川泰弘の活躍を見ていたい反面、小川泰弘というひとりの野球選手がより大きく成長できるような選択をしてほしいと、強く思う。

今オフは山田哲人もFA取得見込みで、ヤクルトファンにとっては非常にナーバスなオフになりそう。

脚注

2020/08/11

yoshi-kky