OPSとは強打者が分かる指標。村上宗隆を例に見ていこう

村上
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打者の成績を表す指標にOPSというものがあります。この数字が大きいほど良い打者といえるでしょう。本項ではOPSについての詳細を、2020年シーズンの村上宗隆選手など実際の数字を具体例として見ていきます。OPSを正しく知って、プロ野球観戦をもっと楽しみましょう!

OPSとは?OPSの計算方法

OPS(On-base plus Slugging)とは強打者を表すための指標で、長打率と出塁率を足し合わせて算出するという非常にシンプルな計算式で求められます。呼称は「オーピーエス」あるいは「オプス」が一般的でしょう。

OPSは強打者を数値化するための指標

打率(安打/打数)のみでは測れない強打者を数値化するためにセイバーメトリクスの祖であるアメリカのビル・ジェームズ氏が開発した指標であるとされています。

長打率と出塁率を足し合わせるだけというシンプルな計算式で誰でも計算が簡単という点で、現在では多くの野球情報メディアで登場します。

なお、出塁率は安打だけでなく四球の数を加味し、長打率は長打が多いと数値が多くなるという傾向にあります。両者のいいところどりをした要素がOPSという計算にも濃縮されているといえるでしょう。

なお、OPSは出塁率と長打率の足し算であるという性質上、最大値は5.000(50割)となります。

例:2020年の村上宗隆選手

村上宗隆

2020年の村上宗隆選手の成績は以下の通りです。

120試合 515打席 424打数130安打 打率.307 28本 86打点 出塁率.427 長打率.585

この成績からOPSを計算するには、出塁率と長打率を見ればいいわけです。

出塁率.427と長打率.585なので、0.427+0.585=1.012という計算になるという具合ですね。

ちなみにOPSは1.000を超えると球史に残る大打者であるとされ、近年だと2013年に60本塁打を記録したバレンティンがOPS1.234という凄まじい数値を叩きだしています(NPBシーズン記録は1974年王貞治の1.295)。

参考:各種数値の算出方法

出塁率=(安打+四球+死球)/(打席数-犠打)

長打率=塁打数/打数=(本塁打*4+三塁打*3+二塁打*2+単打*1)/打数

OPSのメリット

計算が簡単

前述したように、出塁率に長打率を合わせるだけという非常にシンプルな計算法で求められます。

出塁率と長打率自体はどのデータベースにも搭載されており、それらを足し合わせるだけで簡単に求められます。

この打者はOPSが.800を超えているので強打者!とかOPSは.600なので打率の割にイマイチ!とかいうように楽しむことができます。

打率だけでは測れない価値を算出できる

打率だけでは安打数しか見ないので、四球の多い打者を評価できません。

出塁率だけでは四球の多い打者を評価できる一方で、出塁回数しか見ないので長打の多い打者を評価できません。

長打率だけでは長打の多い打者を評価できる一方で、四球の多い打者を評価できません。

このように各指標の弱点を補うものがOPSというわけです。

OPSの問題点

走塁能力が長打力に換算される

同じ長打力を持つ打者でも、走塁能力によって単打が二塁打になったり、三塁打になったりします。

長打率という数字は長打が多ければ多いほど増えていく数値ですから、純粋にホームランを打つための長打力を表す指標であるとは言えないかもしれません。

分母の違う数値を足し合わせる

マックスが10割である出塁率とマックスが40割である長打率を足し合わせることに違和感を覚える人もいるでしょう。

例えば、4打席で3打数1本塁打1四球のAという打者がいるとします。一方で、4打数4安打(いずれも単打)のBという打者がいるとします。

Aの場合は出塁率.500で長打率1.667、OPSは2.167、Bの場合は出塁率1.000で長打率1.000、OPSは2.000となります。本塁打1本と四球1本の打者が4打数4安打の打者を指標では上回ってしまうのですね。

1本の長打で挽回できるのがOPSの特徴であり、単打を稼ぐリードオフマンタイプの数値をホームラン1本で上回れてしまうのがOPSの問題点であるともいえますが、面白いところでもあります。

OPSはどれぐらいで強打者といえるか?

OPSはどれぐらいあれば強打者といえるでしょうか。

OPSの目安

一般にシーズンを通してOPSは以下のような評価がされるでしょう(筆者評)。

1.000以上:球史に残る大打者
.900-1.000:リーグを代表する強打者
.800-.700:優秀な打者
.700-.800:平均的な打者
.600-.700:平均より少し劣る打者
.600未満:長打力に期待できない打者

OPS1.000を超えるのは1年にひとりいるかいないかのレベルであり、このレベルの打者は球史を見てもそういない大打者であるといえるでしょう。

一方で、OPS.600を下回るような打者は打撃面では貢献度が低いと言わざるをえないでしょう。ちなみに先日退団が発表されたヤクルトのアルシデス・エスコバーはOPS.602という成績でした。打率は.273と悪くありませんでしたがOPSの低さが契約打ち切りの原因になったのかもしれません。

2020年のOPS

2020年の12球団OPSランキング(セパ含む)は以下の通りです。

1 柳田悠岐(ソ)1.071
2 村上宗隆(ヤ)1.012
3 青木宣親(ヤ).981
4 浅村英斗(楽).969
5 吉田正尚(オ).966
6 鈴木誠也(広).953
7 近藤健介(日).934
8 丸佳浩(巨).928
9 佐野恵太(D).927
10 大山悠輔(神).918

12 岡本和真(巨).907

セリーグ1位はヤクルトの若き主砲・村上選手ですが、上には上がいるものです。日本一に輝いたソフトバンクの大黒柱・柳田選手は1.071という数字。規格外といえるホームランを打つ技術はもちろん、きっちりと四球で出塁を稼ぐ柳田選手はやはり球史の残るような大打者であるといえるでしょう。

一方で、7位にランクインした近藤選手は5本塁打で長打率.469とこのランキングの中では傑出して長打率の低い打者。しかし12球団トップの出塁率.465と圧倒的な選球眼で並みいる強打者の中に割って入るのもOPSの面白い点でしょう。

また、今季セリーグの最多本塁打と最多打点に輝いた岡本和真(巨人)は10傑入りならず。OPSは比較的低いものの、勝負どころでしっかりと打てたことがタイトル獲得に繋がったといえるでしょう。

まとめ

  • OPSは強打者を測るための指標
  • OPSは誰でも計算が簡単な指標
  • 走塁能力が長打力に反映されてしまうという面もある
  • OPS10割超えは球界トップレベルの大打者
  • 出塁率に特化した打者が強打者と張り合える場合もある

脚注

2020/11/29

yoshi-kky