ヤクルトのアルシデス・エスコバー(34)との来期契約について、ファンの間で物議が醸されている。
来日1年目のエスコバーは今季、リーグ12位の.292という高打率の反面、得点能力と守備範囲では思うような成績を残せていない。単年契約80万ドルのエスコバーが契約延長するのは微妙な線だ。本項では、エスコバーの経歴と今季の活躍を振り返り、来期の契約延長があるかを考察してみよう。
※文中の成績は10/9時点のもの。
エスコバーの去就問題だけど、すごい真面目な選手だし日本人選手じゃ絶対出ないプレーは間違いなく他の選手に好影響があるし、個人的には是非残ってもらいたい。バレンティンに比べると攻撃力が劣るって声もあるけどそりゃあバレンティンと比べたら誰でも劣ってしまう
— ツバメinfo2 (@tsubame_info_2) October 9, 2020
目次
エスコバーの契約とヤクルトでの活躍
エスコバーは昨年、2019年末に1年契約でヤクルトと契約。年俸は80万ドル(約8,400万円)という内容。2015年にカンザルシティ・ロイヤルズでアメリカン・リーグのゴールドグラブ賞を獲得するなど、MLB有数の守備の名手との触れ込みで期待された。
開幕前はバリバリのメジャーリーガーとして期待される一方、2019年はメジャー契約がなかったことによるブランクと、打撃面でのパワー不足が疑問視される声も多かった。
ここまでの印象では、打率は想像以上に奮闘しているものの、それ以外の数字が芳しくないといった状況だ。詳細を見ていこう。
エスコバー残留のポイントは打撃成績
最大のネックとなるのが打撃成績。打率は10/8時点でリーグ12位の.292と、下馬評に比べるとかなり頑張っている。
しかし、外国人に期待したい長打面ではわずか1本塁打で、早打ちの影響か出塁率もリーグ22位の.322と芳しくない。打点も少なく、攻撃面ではチームを牽引しているとは言えない成績になっている。
シーズン開始前の段階では、オープン戦や練習試合では中々ヒットが出ないなど苦しんだが、ベンチで対戦相手の目もを熱心にとるなどの勤勉さが注目された。
シーズン入りすると、打率も3割寸前を維持するなど、徐々に日本の投手にも適応してきて、想像していた以上に打率面で奮闘している。ただ、想像していた以上に長打能力が壊滅的な数字になっている。
打者の長打力を示すIsoP(長打力‐打率)はリーグワーストの.054という惨状。OPS(出塁率+長打率)もリーグ26位の.678という成績である。27打点はリーグ30傑圏外で、ヒットは出ているものの得点能力には貢献していない。
「早打ち」の傾向で四球が少なく、出塁率もリーグ22位の.332とせっかくの高打率も活かせていない。こうなると、打率が高いだけでチームの得点能力面では評価は高いとは言えない。
守備面は足腰の衰えが顕著か、守備範囲が狭い
打撃面が微妙となると、「メジャーリーグゴールデングラブ受賞」の箔がついた守備に目を向けたい。再三好守を見せている印象があるが、守備指標を見るとあまり良くない。守備範囲の広さを表すUZRでは12球団ワーストの-13.7と、広範囲な守備でアウトを取っているとは言い難い。
年齢によるフットワークの衰えもあってか守備範囲を測る指標ではどうしても他の遊撃手と比べると見劣りしてしまう。ただ、外国人特有の球際の打球処理は非常に俊敏であり、スローイングの強さは日本人野手には見られない強烈なものを持っている。
本職のショートだけでなく、サードの守備も献身的にこなしている。10月7日の中日戦では挟殺プレイで併殺をもぎとるなど、百戦錬磨のテクニックも存分に見せている。
守備範囲の指標だけ見ると守備面で貢献しているとは言い難いが、ここぞの場面でチームを流れに乗せるプレーを連発している、といった印象だ(印象などの主観を持ち出すと、指標を持っていた意味がないのだが・・)。
絶妙なランダウンプレーで併殺を完成。無死一、三塁でサードゴロに打ち取ると、村上がホームにボールを送って三塁走者を挟む。ベースカバーに入ったエスコバーが返球受け、動作の中で二塁走者にタッチして1つ目のアウト。そのままスムーズにホームへの送球でダブルプレー。臨機応変な対応を見せた。
— ツバメinfo2 (@tsubame_info_2) October 6, 2020
素行面は良好
ベンチでは必死に対戦相手の成績をノートにつけており、研究熱心だ。ベンチ内でもロイヤルズ時代の同僚・青木宣親の存在もあり、ベンチ内を活発的に盛り上げている。何より、メジャーリーグ仕込みのグラブ捌きは見るものを魅了するだけでなく、廣岡大志や宮本丈など、若手内野手の見本となっている。
今季は得点能力面では劣るものの、研究熱心な姿勢と、高打率は来年以降の成績アップに繋がるかもしれない。また、新しい外国人野手を連れてくるときに、エスコバーの勤勉な姿勢は最高の手本となるだろう。
ただ、素行が良いからといって契約が延長するわけではないのがプロの世界なのだが・・・
契約面はエスコバーの譲歩がカギ
契約面においては、エスコバー側の譲歩がカギになると思っている。
レギュラーを張っているものの、年俸をアップできるような成績であるとは思えない。現状維持程度であれば球団経営的にも苦しくないし、他の外国人野手の保険としてつなぎ留めておく選択も十分考えられる。
エスコバー側も、この成績では国内外の他球団へアピール材料になるとも思えず、譲歩するのではないか。
シーズンオフの去就に注目が集まるが、個人的には現状維持であれば残留を推したい。ただし、他に打撃の良い外国人野手も連れてくるのが条件。エスコバーを半レギュラーとして起用しながら他の外国人野手の活躍を促したい。
エスコバーの成績
エスコバーの詳細成績を見ていこう。
打撃面では先述したようにリーグ12位の高打率である反面、長打力が壊滅的。特に295打数で1本塁打とあっては、助っ人野手としては合格点に達しているとは到底言えない。
守備範囲でも、主要な指標である守備範囲を示す数値は壊滅的。ほとんどが12球団ワーストかそれに準ずる数値となってしまっている。
詳細成績・打撃
82試合
打率.292(295-86)(12)
86安打(18)
11二塁打(30)
1三塁打(13)
1本塁打-圏外
27打点-圏外
23得点-圏外
41三振-圏外
11四球-圏外
8死球(2)
1犠打-圏外
2犠飛(12)
6盗塁(12)
出塁率.332(22)
長打率.346(27)
OPS.678(26)
得点圏.282(15)
9失策(5)
守備率.972(4)
詳細成績・守備
UZR -13.7(9)
ErrR -0.6
RngR -11.6
DPR-1.5
まとめ
打撃成績は想像以上に長打力が無く、得点能力や出塁能力という観点から見ても貢献しているとは言い難い。
ただ、打率という一番目立つ指標で好結果を残しているのは事実で、次年度以降に可能性を含ませるものがある。
契約金次第(現状維持なら・・・)で、エスコバーサイドが譲歩してくれる前提での契約延長は十分可能性があるというのが個人的な見方。
追記:ファンの声
Twitter上にて「エスコバーの残留か退団か」についてのアンケートを行いました。
投票の結果、残留派が83.1%と退団派を大きく上回る結果になりました。賛否両論あるかと思っていたので、少し意外な結果という所感です。
投票いただいた方は、ありがとうございました!
エスコバー
— ツバメinfo2 (@tsubame_info_2) October 12, 2020
脚注
2020/10/10
2020/10/14
yoshi-kky