好調のヤクルト打線において、ひときわ存在感を放っている男がいる。選手会長を務め、今季から背番号を「2」に変更した中村悠平だ。中村は今季途中から2番に入ると、随所に活躍。球界の非常識とされた2番捕手の可能性について検証していこう。
目次
攻守にチーム支える2番捕手・中村悠平
年度 | 打率 | 試合 | 打数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 犠打 |
2021 | 0.323 | 10 | 31 | 10 | 0 | 3 | 0 | 2 |
開幕ダッシュを決めたいチームに激震が走った。
開幕4戦目に今季初勝利をおさめた横浜DeNA戦の後、チームメイトの西田明央がコロナの検査で陽性。主力であった山田哲人、青木宣親らは試合欠場を余儀なくされた。
しかし、チームは窮地に臆することなく、残ったメンバーで奮闘する。中でも存在感を放ったのは2番に入ったのは正捕手の中村悠平だった。
繋ぎの役割をはじめ自ら試合を決定づける一打を放つなど、10試合終了時点で打率は3割をキープ。勝負どころのバントは確実に決めることができ、その存在感はチームに大きな好影響をもたらしている。
開幕から2番に座り、チームの精神的支柱でもあった青木宣親がコロナによるアクシデントで離脱後、欠けたピースにピタリとはまったのが中村の活躍であった。
球界の常識覆す攻める捕手
従来、捕手は「守り専門のポジション」として、打線の中では投手の次に負担の少ない8番に入ることが多かった。
しかし、近年では首位打者・森友哉(西武)やベストナイン・大城卓三(巨人)など、近年の野球は打てる捕手の存在が競合チームの必須条件になっている。
さらに、捕手が全試合スタメンマスクを被るということも少なくなっている。捕手起用においても分業制が着実に進められており、かつてのように「毎試合守備に専念していればいい」ポジションではなくなっている。
表1のように、絶対的な正捕手であっても毎試合スタメン出場するというケースは少ない。
捕手においては守りの要であるだけでなく、攻撃力も兼ね揃えていないと勝ち残れないような時代へと移っているのだ。
2番打者というのは、繋ぎの役割や得点に絡む打撃など、作戦面であらゆる働きを求められる非常に難しいポジション。そんな役割や重圧をこなすには、中村の存在が必要不可欠なのではないか。
チーム | 選手名 | スタメン回数 |
ソフトバンク | 甲斐拓也 | 100 |
西武 | 森友哉 | 92 |
阪神 | 梅野隆太郎 | 86 |
巨人 | 大城卓三 | 76 |
中日 | 木下拓哉 | 74 |
DeNA | 戸柱 | 71 |
ロッテ | 田村龍弘 | 65 |
中日 | 會澤翼 | 60 |
オリックス | 若月健矢 | 59 |
日本ハム | 宇佐見真吾 | 57 |
ヤクルト | 西田明央 | 56 |
楽天 | 太田光 | 51 |
選手会長・中村の責任感
中村はレギュラー捕手に定着以来、打率が3割を上回ったことがない。それどころか、打率が.250を超えたのも2019年の一度のみ(表2参照)。
2016年には打率が1割台と低迷し、中村については「打てない捕手」「守るだけの捕手」というイメージがどうにも付き纏っている感が否めない。
しかし、勝負どころで価値ある一打を放つなど、集中力を発揮した場面での打撃は目を見張るものがある。
今季の中村は10試合終了時点で打撃好調、打率も3割をキープし、好調の打線をバットで引っ張っている。
今年の中村は我々の常識や、野球に対する固定観念を覆してくれるのではないだろうか、そんな予感をさせてくれる活躍をしてくれるだろう。
通年戦う体力はある?
「2番・捕手」はまさに「攻めの捕手」といえる役割を果たしている。
チームは5年目捕手・古賀優大が成長著しく、ルーキーの内山壮真が早速1軍へ昇格した。
西田明央だってすぐに戻ってくるし、大ベテラン・嶋基宏の存在も大きい。
ライバルと切磋琢磨しながら、時には負担を分散しながら、チームとして戦っていく姿が長いペナントとしては求められるだろう。
中村悠平の年度別成績
年度 | 打率 | 試合 | 打数 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 | 犠打 | 出塁率 |
2009 | 0.000 | 5 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.200 |
2010 | 0.333 | 3 | 6 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0.333 |
2011 | 0.333 | 13 | 6 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.333 |
2012 | 0.254 | 91 | 209 | 53 | 1 | 15 | 1 | 8 | 0.344 |
2013 | 0.234 | 84 | 239 | 56 | 4 | 24 | 1 | 12 | 0.325 |
2014 | 0.298 | 99 | 325 | 97 | 5 | 41 | 0 | 7 | 0.355 |
2015 | 0.231 | 136 | 442 | 102 | 2 | 33 | 3 | 14 | 0.299 |
2016 | 0.187 | 106 | 321 | 60 | 3 | 37 | 2 | 14 | 0.266 |
2017 | 0.243 | 127 | 419 | 102 | 4 | 34 | 2 | 11 | 0.324 |
2018 | 0.211 | 123 | 341 | 72 | 5 | 26 | 2 | 22 | 0.285 |
2019 | 0.269 | 126 | 372 | 100 | 5 | 36 | 1 | 13 | 0.373 |
2020 | 0.175 | 29 | 80 | 14 | 0 | 3 | 0 | 2 | 0.256 |
2021 | 0.323 | 10 | 31 | 10 | 0 | 3 | 0 | 2 | 0.371 |
通算 | 0.240 | 952 | 2795 | 670 | 29 | 253 | 12 | 105 | 0.319 |
中村のバットに注目
4月7日の広島線(神宮)、この日も2番に座った中村は3安打猛打賞の活躍。2得点に絡み、チームの逆転勝利、今季初の神宮勝利をアシストした。
さらに、開幕から課題であった投手陣も好調。まさに投打でチームを引っ張る大黒柱として活躍している。
背番号を「2」に改めて臨んだ春季キャンプでは、球界のレジェンド古田敦也氏にキャッチャーの極意を伝授された。
一皮も二皮も生まれ変わった新生・中村悠平の活躍を是非目に焼き付けていこう。
脚注
2021/04/08