(雑談)スライダーとカットボールの違い

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野球における変化球の代名詞のひとつと言えば「スライダー」ですが、近代野球においては「カットボール」という球種が台頭してきており、多くのピッチャーがこれを多投し、スライダーと並ぶかそれ以上の存在になりつつあります。

では、どうしてスライダーとカットボールの違いはどこにあるのでしょうか。野球中継でも、当たり前のようにこれらの呼び名が混在して使われているので、両者の定義と違いを整理するべく、下記にまとめました。

スライダーとカットボールの定義

スライダー

利き手と反対方向、右投手であれば右打者のアウトコースに逃げるように変化していくボールです。

変化球としては非常にポピュラーで、握りはフォーシームと同じか、ツーシーム気味の握りが主流です。人差し指と中指で指先の力を使ってスピンを与えるため、空気抵抗で沈むように逃げていき、ストライクゾーンからボールゾーンに逃げるようなボールが決まれば、空振りがとりやすい球種です。「バックドア」と呼ばれる、ボールゾーンからストライクゾーンいっぱいに入っていくスライダーも大きな武器になりますが、一歩間違えればホームランコースに投球されてしまうため、諸刃の剣とも言えます。

スピンのかけ方で、球速が遅く大きく曲がるカーブのような軌道を持つ「スラーブ」と、縦方向へのスピンが大きく効いた「縦スライダー」など、多くの種類がある。しかし。本人が「スライダー」と言ってしまえばそれはスライダーであって、明確な区分はありません。

スライダーの起源

「スライダー」の起源は1900年初頭のメジャーリーグで投げられていたという説が有力です。

日本では一リーグ制時代に活躍した藤本英雄氏(元巨人など)がこのボールを操っていたとされています。

カットボール

日本では「カットボール」という表現で親しまれていますが、メジャーリーグでは「カットファストボール」「カッター」と呼ばれたりします。

名前の通り、スライダーの亜種と言うよりは、ファストボール(ストレート)の一種で、利き手方向にシュート回転しながら沈んでいく「ツーシームファストボール」と逆回転のボールと言うほうが分かりやすいかもしれません。

「カットボール」の起源

ムービングファストボールとして無意識に球が変化するファストボールは古くから存在していたものの、意識的に球を変化させるファストボールは、「マリアノ・リベラ」(元ニューヨーク・ヤンキース)が起源であり第一人者です。メジャーリーグ最後の背番号42(1997年に黒人初のメジャーリーガー「ジャッキー・ロビンソン」の功績を讃えて全球団で永久欠番となっている)を背負ったリベラは、試合でカットボール1球種のみしか投げない投手としてメジャーリーグ最高の通算652セーブをあげるなどの活躍を残しました。

日本においては1998年の新人王、2004年の沢村賞など数々の投手タイトルを獲得した「川上憲伸」(元中日)が代表格であるとされています。川上はプロ1年目の1998年にいきなり14勝をあげて新人王を獲得するが、その後は伸び悩みます。そんな時に出会ったのが、リベラの投げるカットボールであった。川上はこのカットボールを武器に、中日黄金期を支える投手となりました。

スライダーとカットボールの違い

スライダーとカットボールの両者の違いについては色々な見方がありますが、ここでは2つの観点から見ていこうと思います。1つは「目的の違い」、2つは「投げ方の違い」です。

目的の違い

スライダーは主にストライクゾーンからボールゾーンに逃げ、空振りを誘うことを目的としています。このとき、変化量は大きく5つ分ほど変化します。

一方で、カットボールはスライダーよりも打者の手元で小さく変化し、打者の芯をずらして打ち損じさせることを目的としています。このとき、変化量はボール1つか2つ分変化します。

プロ野球中継などでスライダーとカットボールの変化の違いを見分ける際には、球速や変化量で見分けるのが一番でしょう。

投げ方の違い

スライダーはボールのリリースの瞬間に、切るようにスピンをかける。乱暴な言い方をすると、手首の力を使って捻るように投げます。一方で、カットボールはリリースの瞬間に、手首の力は使わずにストレートと同じ投げ方で指先(主に中指)の力のみでボールにスピンを与えて投げるのが一般的です。

しかし、両者に共通するのは、無理に手首の力に頼ろうとせず、ストレートと同じ腕の振りで投げることが重要です。

カットボールの投げ方

カットボールの投げ方は投手によって多様で、一口にこれが正解であるとは言えません。

しかし、野球シーズン中にはメジャーリーグで登板しているyoutuer兼メジャーリーガーであるダルビッシュ有さんによると、概ね共通している投げ方があると言い、動画内で解説をされています。

意識的にはほぼ真っ直ぐと同じ感覚で、指先の無意識的な力によってスピンを与え、変化を加えることが肝要だと言います。

参考:Yu Darvish Official youtube channnel

野球ゲームでの取り扱い

コナミが販売しているゲーム「実況パワフルプロ野球シリーズ」では、00年代初旬にカットボールが導入されました。それまでは高速スライダーとスライダーが存在しましたが、カットボールの登場で、投球の幅が広がることになりました。

「たかがゲームの分類」と雑な扱いをする者もいますが、長年のシリーズで実態に即した改良がゲーム内でも行われています。

最近のオンラインアップデートではカットボールに変化が加えられ、打者の手元で急速に沈んでいく魔球となりました。打者にとってはストレートのつもりで打ちに行ったところ、スイングのタイミングで沈まれるので、より実態に即した改良がくわえられたといいます。

パワプロの最新作は2020年7月9日発売予定です。NPBの現役選手でカットボールの代表的な使い手といえば山本由伸選手(オリックス)が代表的ですが、どんな能力で出てくるのでしょうか。

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結論

スライダーとカットボールは投手から見て利き腕と逆方向に沈みながら変化していくという共通点があります。乱暴な表現をすると、スライダーを速くしたものがカットボールという表現ができます。この表現は、大きく間違っていないとも言えますし、間違っているとも言えます。

スライダーの中には高速スライダーと呼ばれる球種も存在しますし、カットボールの中でもスラッター(スライダー+カッター)と呼ばれる球種も存在します。投手によっても明確な区別をしていないケースがあるというのが実態です。

両者には共通点が多く、本人が申告すればその通りの変化球となります。

しかし、打者にとっては大きく逃げる変化をするスライダーと、小さく手元で変化するカットボールを投げ分けられると、厄介なことこの上ないです。

両者の違いを把握することで、より野球の楽しみ方が増えるのではないでしょうか。

なお、本項でも私が文中で「一般的」と言ってる表現も実は一般的ではなかったりするかもしれません。人によって投げ方や定義も違うと思いますので、「これは違うぞ」という方は、コメント欄にて是非意見をいただけると幸いです。

脚注

2020/05/31

yoshi-kky